研究課題
植物RNAウイルスは、植物に感染し、壊死・黄化・モザイク・萎縮などの多様な病徴を呈するが、それらの病徴発現の分子メカニズムは明らかにされていない。ダイコンひだ葉モザイクウイルス(Radish mosaic virus;RaMV)は、モデル植物シロイヌナズナに感染し、茎及び花器官に特徴的な形態異常を引き起こす。本研究では、RaMV感染により引き起こされる特徴的な形態異常について、宿主であるシロイヌナズナのゲノム情報を利用し、病徴発現における遺伝子制御ネットワークの解明を目的としている。本年度は、シロイヌナズナに感染するRaMVとして、RaMVカリフォルニア分離株(RaMV-CA)のゲノム塩基配列の解読を行った。その結果、RaMV-CAは、これまでに配列が明らかにされているRaMV日本分離株(RaMV-J)と比較して、RNA1の塩基配列では94.1%、RNA2では85.7パーセントの相同性を示した。このことから、RaMVの分離株間ではRNA1に比べてRNA2の配列の多様性に富むことが明らかになった。なお、これまでRaMVが分類されるComovirus属では同種の分離株間でRNA1とRNA2の多様性に差異がある例は報告されていなかった。この配列解析により、RaMV-JおよびRaMV-CAの2分離株間で同一の植物における病徴発現に差異がある場合に、その原因となるウイルス因子の解析が可能となった。さらに、RaMV-JおよびRaMV-CAの2分離株の精製ウイルス粒子をそれぞれシロイヌナズナに接種することにより、両分離株のシロイヌナズナへの感染性の比較および再現性良く形態異常が生じる接種条件の検討を行っている。加えて、同じ植物RNAウイルスでPotexvirus属に分類されるasparagus virus 3およびPlantago asiatica mosaic virusの7分離株のゲノム塩基配列を解読した。得られた配列に基づき、系統解析およびペアワイズ解析を行うことにより、同属の種と系統の分類基準の整備を行った。また、Potexvirus属ウイルスにコードされるRNAサイレンシングサプレッサーについて比較解析を行った結果、P1AMVのRNAサイレンシングサプレッサーが特に高い活性を示すことを見出した。
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Archives of Virology 153
ページ: 219-221
ページ: 193-198
ページ: 2167-2168