研究概要 |
本年度は本研究の目的である冷却針を用いた微小凍結手術の実現のために1.冷却針の冷却能力を考慮した生体組織凍結現象の数値計算,2.冷却針内部沸騰流れの可視化実験,3.熱物性値の高精度評価の研究を行った. 1.冷却針の冷却能力を熱伝達率によりモデル化し,冷却針による凍結手術を実現するために必要な冷却針内部の流れの状態を見積もった.その結果,冷却針内部の流れ場の状態の違いにより生体組織の凍結に大きな影響を及ぼすことを明らかにした.この結果は冷却針の設計をする際に冷却針先端部で沸騰を生じさせる必要があることを示唆している. 2.冷却針で用いる予定の高圧フロンの代わりに減圧状態の水を用いた冷却針内部可視化実験装置を製作および実験を行った.冷却針は同軸二重管構造を有しているが,その内管の内径が冷却針の表面温度に影響を与えることが明らかとなった.また可視化により冷却針先端部における気泡の生成過程を観察することができた. 3.凍結手術において定量的な予測を行う際には熱物性値を高精度に評価する必要がある.一方で熱物性値は温度等に強く依存しており,実験結果からその依存性を評価するのは困難であった.本研究では熱物性値とその依存性を評価することが可能な,逆問題解析による汎用的な熱物性値評価手法を開発している.これまでに本手法にてスクロースと塩化ナトリウムの水に対する物質拡散係数とその濃度依存性を決定し,文献値と比較し良好な一致を得ること確認した.
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