暑熱環境下における肉用鶏生産では、成長・肉質といった生産性が低下する。この低下には暑熱によって引き起こされる「酸化ストレスの増大」が関与している可能性がある。本研究の目的は、急性暑熱曝露にともなう(1)ROS過剰産生メカニズムの解明と、(2)その栄養制御法の確立であり、本年度は(1)を重点的に行った。 酸化ストレスは、過剰な活性酸素種(ROS)によって誘導される。ROSの生成は、スーパーオキシド(O_2^<・->)に端を発しており、ミトコンドリアはこの産生が多い器官の一つである。ミトコンドリアにおけるO_2^<・->の産生は、ミトコンドリア膜電位と誘導型プロトンリーク反応に依存する。1年目にあたる本年度では、暑熱時のミトコンドリア反応グループの個別解析を行い、暑熱にともなうO_2^<・->の産生増大を招くメカニズムの一端を明らかにした。すなわち急性暑熱によって、(1)ATP合成に利用される膜電位が、電子伝達鎖における基質酸化反応の増大によって誘導されることにより、O_2^<・->産生が増大すること、(2)暑熱にともなう脱共役タンパク質(UCP)の発現の低下が、誘導型プロトンリーク反応の低下をもたらすことを明らかにした。 これら暑熱誘導メカニズムは、今後、栄養制御法を確立する上での重要なターゲットになると考えられるが、暑熱下におけるこれらの生理的意義は未だ明らかにされていない。そこで、2年目以降はこれらの意義を明らかにするために、(1)については、その構成タンパク質分子の発現挙動を網羅的に解析し、また(2)については、同反応の低下と膜電位およびO_2^<・->産生の3者の関係を調査する予定である。
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