本研究の目的は、戦後日本経済における貿易障壁の発生要因を明らかにすることである。 初年度は戦後農業において発生した市場介入に着目した統計分析を行った。その結果、市場介入の要因として、1970年代後半から活発化した農協による与党への政治献金活動に加えて、農業従事者の投票行動、具体的には比較的小さいイデオロギーのばらつきが統計的に検出された。 初年度の研究成果は下記に挙げた査読付き学会報告として公表した。 1、The International Agricultural Trade Research Consortium IATRCは世界トップクラスの応用経済学者(農業経済)が集まる学会である。2009年現在、世界銀行においてAgricultural Distortion Project(世界各国において観察される政府の農業への市場介入を対象とした政治経済分析)が進行中であり、その参加者も上記学会において研究を発表している。それゆえ、上記学会に参加した意義として、現在の本研究の到達点と国際的な研究とのギャップを確認すると同時に、論文を国際レベルへと改善するために、第一線の研究者からコメントを得られたことが挙げられる。特に重要な論点として「弾力性の推定方法」を指摘していただいた。 2、日本政治学会・現代政治過程研究フォーラム 日本政治学会において伝統的に利益誘導と政治という観点から、農村地域と自民党の関係を軸とした計量分析が行われている。上記学会発表の意義として、第一級の政治学者から農村地域における投票行動、利益団体に関するコメントがいただいた点である。討論者からは非常に丁寧に適切かつ示唆的なコメントをいただいた。農協の政治的な貢献経路の多様性、議員定数不均衡、農業従事者の過剰な政治的影響力の要因等、いづれも今後の研究の糧になる重要な論点であった。
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