本年度は、空間明示的な手法による農家の農業・牧畜経営および人口統計学的データの収集、およびそれらのデータを用いた農家の土地利用に関する意思決定モデルの構築を行った。 意思決定を含む社会経済的側面を空間明示的な土地利用モデルに組み込む場合、地域や人々に存在する異質性、特に空間的異質性をいかに反映させるかが課題として指摘されている。本研究では、まずこれまでに行った対象地域内の全ての村落リーダーからの聞き取りデータを用いてクラスター分析を行い、地域レベル(村落ごと)の社会経済的な異質性をとらえた上で、異なるタイプの村落を抽出し上記農家調査を実施した。続いて、農家調査から得られた多くの社会経済的指標を用いて主成分分析およびクラスター分析を行い、農家レベルの異質性を抽出し、異なる農家タイプごとに土地利用の意思決定モデルを作成した。農家調査では、農家やその農家が利用している全ての土地の位置を幾何補正済み高解像度衛星画像上にマッピングし、その他の調査項目および地形データ(Digital Surface Model)を含むこれまでの衛星画像解析結果と共にGISデータ化した。この空間明示的な農家データを用いることにより、意思決定モデルの中で、農家の土地利用戦略に影響を与える空間的異質性(例えば土地へのアクセシビリティや地形の異質性)を考慮することが可能となった。つまり、本研究の意思決定モデルでは、地域および農家レベルの異質性を意思決定主体に反映させ、かつ意思決定過程に影響する空間的異質性を組み込むことができたといえる。 現在、昨年度までに作成した土地の荒廃・回復に関するモデルと詳細なランドスケープデータ、そして上記意思決定モデルを連動させる統合型土地利用モデルをマルチエージェントシステムにより構築中である。
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