1年目では、(1)多彩な蛍光波長を有する蛍光基のスクリーニングおよび(2)アミノ酸誘導体の合成、(3)非天然アミノ酸のペプチド鎖中への導入を行う予定であった。最初に、酸化反応後に蛍光を発する官能基のペアのスクリーニングを行った。5-ヒドロキシインドールに対してベンジルアミン誘導体を加えて酸化反応を行ったところ、ベンゼン環上にアミド基やジメチルアミノ基を導入した誘導体が異なる蛍光波長を示す事がわかった。またベンゼン環をピリジン環に変換した場合、生成物は蛍光強度を保持したまま、蛍光波長を大きく変化させた。これらのベンジルアミン誘導体は、蛍光団形成基として有用であることを新しく見いだし。そして、ベンジルアミンと5-ヒドロキシインドールから得られる蛍光団の光化学的性質を測定したところ、水溶液中でフルオロセインの約10%の輝度を示す事がわかり、蛍光プローブとして実用可能であることがわかった。現段階では、これらの化合物をアミノ酸誘導体とするための合成を行っており、ステップ(2)の途中の段階である。一方、当研究課題では、ペプチドライブラリー中からインテグリン特異的に結合するペプチドを作製する。そこで、mRNAディスプレイ法を用いたペプチドの探索を行う。実験計画の2年目に予定していた実験だったが、本年度にこの技術を確立するための予備実験を行った。具体的には、(1)mRNAとピューロマイシンリンカーのライゲーション、(2)これを用いたペプチド翻訳合成、(3)逆転写反応などの各反応条件の検討や(4)PCRに用いるプライマーの最適化、(5)ペプチドライブラリー作製に用いるmRNAライブラリーの作製を行った。本年度ではこれらmRNAディスプレイ法の各ステップの最適化を完了したため、実際にmRNAディスプレイ法を用いて、ペプチドの探索を行う予定である。
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