研究課題
申請者のこれまでの研究から、ヒトビスチンはリボソーム生合成に関与し、HeLa細胞においてビスチンをノックダウンすると、細胞の増殖が抑制された。また、HeLa細胞および293T細胞を用いた細胞分画解析によって、ビスチンが核小体およびリボソーム画分だけでなくサイトゾル画分に存在することが申請者の研究から示された。サイトゾル画分のビスチンがリボソーム生合成と異なる未知の機能を有し、細胞増殖の制御に関わる機能を持つ可能性があると考え、GST融合ビスチンを発現する293T細胞を樹立してGSTプルダウン実験を行ない、質量分析によってビスチンと相互作用するタンパク質の探索を試みた。しかし現時点で、サイトゾル画分におけるビスチンと結合するタンパク質の同定に至っていない。リボソーム生合成過程は厳密に制御されており、その異常とがんの間に深い関わりがあると考えられている。しかしながら、リボソーム生合成の詳細なメカニズムについては未解明の部分が多い。したがって、がん細胞におけるリボソーム生合成機構の解明を目指し、リボソーム画分においてビスチンと相互作用するタンパク質の探索を試みた。その結果、リボソーム40S小サブユニットの核外輸送に関わると推定されるタンパク質が複数同定され、ビスチンと小サブユニット核外輸送複合体を形成することが示唆された。さらに、機能未知のジンクフィンガータンパク質が同定された。このタンパク質をクローニングして293T細胞に発現させると、核小体および細胞質への局在が観察されたため、リボソーム生合成への関与が示唆された。以上の結果から、ヒトがん細胞においてビスチンが新規のものを含むリボソーム生合成因子の候補と結合して、リボソーム小サブユニットの核外輸送に関わると考えられた。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Cell Biochemistry & Function 28(in press)