研究課題
前年度報告した広汎性発達障害(PDD)において臨床群のデータを追加し、投稿論文の執筆を行った。具体的な研究内容を以下に示す。静止画表情認識の先行研究の結果には矛盾があるため、年齢、顔認識能力、症状の影響と表情認識能力との関係を調べた。その結果、PDD群において恐怖表情の認識障害があることが示された。定型発達群では年齢の増加によって表情認識・顔認識能力が向上したが、PDD群ではこの関係が見られなかった。特に年齢の増加による表情認識の促進に群間差が見られ、基礎的な顔認識能力で説明できない情動処理の障害がある可能性が示唆された。また、社会的障害の症状の程度、特に人に対する注意が重い人ほど、恐怖表情の認識成績が悪かった。PDD群には恐怖表情の認識障害があることが示されたが、この障害には非定型的な知覚処理、注意、情動反応が関与している可能性がある。次に、PDD群の動的表情の知覚について調べた。先行研究から、定型発達群では表情が動的に呈示されると同じ強度の静止がよりも誇張した表情として知覚されることが示されている。しかし、PDD群では表情強度が弱い場合に静止画と比較して動画表情の強度が誇張して知覚されないということが示された。PDD群では情動的シグナル増幅して知覚するメカニズムに障害があり、表情の小さな変化を敏感に感知することに障害があることを示唆している。また、PDDにおける視線方向への注意シフトの障害に関わる神経基盤をあきらかにするための前段階として、定型発達者の神経活動の時空間構造についてMEGを用いて調べた。暫定的な結果ではあるが、逸れた視線に対して視線方向の処理に関わる上側頭溝、頭頂-前頭の注意ネットワークが順に活動することが示された。また、これらの脳部位は矢印の向きに対する注意シフトでも活動することが示された。今後はPDD群との比較研究をすすめる予定である。
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