前年度の研究で、断層すべりインバージョン解析によって得られた成長期から衰退期への移り変わりを捉えた。その移り変わりの際にどのような過程が進行しているのか、明らかになっていない。そこで、破壊過程のわずかな消長を捉えるために、震源における高周波地震波放射の時間的空間的な特徴を調べる手法を開発し、これまでの結果と合わせて地震の破壊成長過程の特徴を幅広い時間・空間スケールで記述することを試みた。 手法としては、整合フィルタ解析法を応用した。これは、検出したい時系列データと似た部分を複雑な時系列から見出すために、両者の時刻をずらしながら相互相関係数をとっていき、高い相互相関係数を得られるところを検出するものである。本研究では、大地震と小地震の波形を高周波帯域(例えば、4-16Hz)で比較することで、高周波放射を見出すことを目指した。この手法を利用するための計算機コード開発と確認のためのテストを行った。 次に、開発した手法を2004年米国パークフィールド地震(M6.0)に適用して、同地震の高周波放射源の特定を目指した。その結果、破壊開始点から北西に8km程度のところで、破壊開始からおよそ3秒後に高周波地震波が放射されたことが推定された。2004年パークフィールド地震は、主に2つの主要な破壊領域からなると知られているが、今回推定された高周波地震波放射源は、その2つ目が破壊し始めるところに相当する位置にある。ただし、さらに議論を深めるには更なるデータが必要であり、今後はよりデータの充実した日本の地震に取り組む予定である。本年度、その足がかりをつくったことには大きな意味がある。
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