昨年度までに、マイクロプラズマ技術と、電子ビームをもちいた直接描画プロセスのひとつである集束電子ビーム技術を融合し、水素-アルゴンマイクロプラズマをもちいた従来の電子ビームによる堆積物への後処理に加え、本研究で開発したマイクロプラズマ援用型集束電子ビーム誘起蒸着法により直径1.5μm程度のコーン型の銅の堆積に成功した。一方でプラズマによる厚さ200nm程度の広範囲(径数百μm程度)の堆積物が同時に基板上に確認された。今後、プロセスを最適化し、直接描画技術による3次元ナノ構造物質の作製する際には、以上のようなプラズマによる堆積物は堆積されず、電子ビームの照射部分のみに堆積プロセスがおこなわれなければならない。今年度は基板上に到達する原料ガスとプラズマによるガス流のシミュレーションをおこない、プラズマによる堆積物の堆積課程をモデリングにより考察した。その結果、プラズマによる熱の影響は少なく(プラズマ照射部の局所的な基板温度は50℃以下)、基板上に吸着した原料ガスに対する、プラズマ中の原子状水素による水素ラジカルの影響が支配的となることが確認され、堆積速度に関するモデリングの結果は実験結果と非常に良い一致を得た。以上の結果を踏まえて、今後プロセスを最適化するためには水素ラジカルを適用した本法の場合、原料ガスの再選定等が必要となると考えられるが、電子ビーム誘起蒸着法の反応性を向上させた本研究は今後のプロセス制御において有効な手段のひとつとなると考えられる。
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