研究課題
我々の脳は外界からの様々な感覚情報を、自らの意図や記憶・知識といった内的な要素と統合し、現在自らがおかれている状況「現実」を推測している。この「現実検討能力」に関与する脳神経ネットワークのうち、平成21年度は「エージェンシー」の神経学的基盤に関して、前年度までの実験・解析結果を学術論文にまとめ、国際学会誌Neuroimage誌に筆頭著者として発表した。Agencyは「ある動作を自分が引き起こしている、あるいはコントロールしている」と感じる感覚であり、我々がある運動事象を自己に帰属させ、自他の分離を行う上で重要な感覚である。これまでの先行研究では、Agency形成に特異的な「自らの運動企図と、運動に伴う感覚フィードバックの整合性エラー」の処理に関わる神経基盤と、それに付随する「多様式の感覚入力どうしの整合性エラー」あるいは「予測エラー全般」の処理に関わるそれとが区別出来ておらず、Agencyに真に特異的な神経基盤は明らかになっていなかった。本研究では、上記の要素の分離を可能にする課題デザインを用い、それぞれの神経基盤を、機能的MRIを用いた脳機能イメージングの手法にて明らかにした。結果として、「Agency」形成に特異的に関与する脳領域として、補足運動野、左外側小脳、および右後部頭頂葉、右EBA領域の一部を明らかにした。同様に、「多感覚様式の感覚入力どうしの整合性」の処理に関与する脳領域として、両側下前頭回、島皮質、右中側頭回、左下頭頂小葉、左頭頂間溝、右前補足運動野を同定した。
すべて 2010 2009
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Neuroimage 50
ページ: 198-207
Journal of Cognitive Neuroscience (印刷中)
Journal of Neuroscience 30
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ページ: 129-133