本研究課題では、地球型惑星の大気および表層環境について、その形成と初期進化を理論的手法によって議論する。前年度までに初期金星大気の進化についての結果が得られたので、本年度からはより一般的な地球型惑星に着目して研究を進めた。 近年発見が相次いでいる太陽系外の巨大な地球型惑星(スーパーアース)について、その系の特徴が木星・土星の衛星系の特徴と類似している点に注目し、巨大ガス惑星周りの衛星形成についての研究を行った。太陽系内の衛星系から太陽系外の地球型惑星を論じるというのは極めて独創的であり、そのアイデアについては複数の学会および研究会で発表を行った。 さらに惑星形成モデルを衛星形成に適応することにより、木星・土星の衛星系(ガリレオ衛星・タイタン)の形成過程を計算した。本研究では、過去のN体計算の結果をもとに半解析的な式を導くことで、短時間に大量のパラメータスタディを行うことが可能となり、衛星形成について初めて統計的な議論を行うことができた。計算の結果、衛星形成環境の違いから、木星・土星の衛星系の特徴の違いが自然に説明されることが明らかになった。この結果は、太陽系やスーパーアース系の形成過程の違いにも重要な示唆を与えており、今後一般的な地球型惑星の形成・進化の議論が大きく進むことが期待される。また巨大ガス惑星周りに形成される周惑星円盤の特徴を議論することで、原始星周りに形成される円盤についても新たな知見が得られた。これは地球型惑星の形成環境を議論する上で非常に重要な結果である。これらの成果についても、複数の論文および学会において発表を行った。
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