本科学研究費による研究目的は、渤海領内諸種族の存在・活動様態の解明のために、これら諸族が渤海の支配を受ける以前の状況と、渤海により遷徒された諸族が周辺諸国に与えた影響とを明らかにすることである。 当該年度は、具体的には、1隋唐代(7〜10世紀)の越喜靺鞨の住地、2高句麗遺民と唐の遼東地域支配、3賈耽『古今郡国県道四夷述』逸文収集の3つの題目についてそれぞれ、1については(1)関係文献目録の作成、(2)その収集、(3)収集した研究文献の分析、(4)関係史料の収集を、2については(3)を除く同様の作業を、3については逸文収集作業を進めることを予定した。 1については作業がほぼ終了し、越喜靺鞨に関する従来の研究史及び『全唐文』をはじめとする唐代史料における関係史料の所在を把握することができた。また遼史地理志のテキスト調査を名古屋市立蓬左文庫にて行い、越喜靺鞨の住地に関して評価が分かれている記事の文字を確認した。2については(1)と(4)の作業のみほぼ終了した。関係史料の所在をほぼ把握したにとどまった。3については、今後継続予定の課題であるが、唐代史料の検索により数条の逸文を収集した。いずれも上記三つの課題を解明するための重要な基礎作業である。 また当該年度予定外の成果として、第一に次年度より開始予定の『三国遺事』靺鞨・北方疆域関係記事に関する研究のため、『三国遺事』版本調査を日本及び韓国にて行い、第二に2の課題と関連して、統一新羅の東北境に関する論考を発表した。
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