本研究の骨子は、音楽の情動的な意味の処理に関わる脳内メカニズムの解明を目的に、脳機能イメージング研究を実施することであった。 採用期間中に、1)基本情動を表現する音楽に関する予備的調査研究、2)音楽の持つ情動表現の認知に関わる脳部位についての研究、3)音楽の持つ情動表現の評定と、音楽によって喚起された聴き手の内的な情動反応の評定にかかわる脳内機構に関する研究を、当初の予定通り実施した。 その結果、音楽の持つ情動表現の評定と、音楽によって喚起された聴き手の内的な情動反応の評定では前頭前野、聴覚野、後部頭頂皮質、帯状回、楔前部に共通した活動が見られた。一方、情動表現では下前頭回により強い活動が見られ、情動反応では楔前部により強い活動が見られたことから、それぞれの領域が各課題にとってより重要である可能性を示唆した。また、音楽の持つ情動表現の評定には、音楽の専門的な学習の有無にかかわらず、左下前頭回がより重要な役割を持つと考えられた。
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