マイロクフスターにおけるメソスケールの特異現象、とくにアルカリハフイド(AH)および金属クラスターにおける高速拡散現象のメカニズムの解明をめざして研究を行っている。とくに、AHと金属系で異なる拡散機構が発現する原因を、クラスターの持つ空孔エネルギーの観点から説明することを試みている。 このため、クラスターの静的な構造から空孔生成および空孔移動エネルギーを評価した。一方で、これに対して、クラスターのダイナミクスにおける空孔濃度および空孔移動頻度を計算し、空孔エネルギーとの整合性を調べることで、空孔ダイナミクスの性質とそのエネルギー評価の妥当性を検証した。この結果、空孔ダイナミクスはArrhenius型温度依存性をもち、それをもとに空孔エネルギーを評価することができた。これと静的な評価を比較した結果、空孔ダイナミクスと整合性をもった空孔生成・移動エネルギーを、クラスターの静的な構造をもとに評価することが出来ることがわかった。 一方で、AHクラスターの混合の有無はそのイオン種の半径比によって決定されるとされているが、時間無限大での混合状態を計算することでこのイオン種依存性の起源について調べた。このため、混合のエントロピーを解析的に評価し、数値的に求めた生成熱と合わせて現象論的な自由エネルギーを構成し、その極小状態と分子動力学シミュレーションとの比較を試みた。この結果、AHクラスターにおける高速拡散現象のイオン種依存性を、生成熱依存性として説明できる見通しをえることができた。また、これによって空孔移動の過程を特定することが可能になったため、その力学的相関を評価する準備が整った。さらに、クラスター等のポテンシャル超曲面構造を連結グラフによって可視化し、その統計的性質を記述する手法の開発を共同研究として行った。
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