研究概要 |
本年度はセル・オートマトンから対応する偏微分方程式を導出する逆超離散化の手法を反応拡散系へ適用するためのたたき台として,Belousov-Zhabotinsky反応のセル・オートマトン・モデルの構築を行った. Belousov-Zhabotinsky反応は周期性を持つ化学反応として知られ,セル・オートマトンによるモデルが多く提案されている.しかしセル・オートマトンは離散的な空間変数のために得られる時間発展パターンが異方的になることが報告されている.応用上の立場からこの問題の解決方法がいくつか提案されているが,そのためにモデルの時間発展規則が煩雑なものになり,セル・オートマトン特有の計算コストの低さという利点が損なわれるケースがしばしばある. 今回私が提案したBelousov-Zhabotinsky反応のモデルは,そのモデル中においてある重要な働きをする閾値パラメータに空間的なランダムネスを加えることで,その異方性を取り除くことができるというものである.本モデルは非常にシンプルな時間発展規則で構成され(計算のコストパフォーマンスにも優れ),得られるパターンにも異方性が見られないことから,その研究意義は大きいと考える. また最近,上記のモデルとは別にランダムウォークを用いたBelousov-Zhabotinsky反応のセル・オートマトン・モデルの構築手法を提案しており,これを用いることで他の反応拡散系も容易にセル・オートマトン化できるのではないかと期待している.
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