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2010 年度 実績報告書

〈贈与としての語り〉の思想史的研究およびその臨床的・社会的応用可能性について

研究課題

研究課題/領域番号 08J08423
研究機関京都大学

研究代表者

春木 奈美子  京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)

キーワード贈与 / 語り / 精神分析
研究概要

人類学の多くの資料や、文学的天才の作品が教えるように、贈与について考えるとき、セクシュアリティの問題をそこから切り離すことはできない。贈与に解き難く付随するこの問題系は、レヴィ=ストロースが記述する女性の交換にはじまり、ピエール・クロソウスキーの『歓待の掟』における倒錯的な贈与に至るまで、例に事欠かない。ところで、フランスの精神分析家ジャック・ラカンは晩年のセミネール20巻『アンコール』のなかで、セクシュアリティについて独特な議論を展開している。彼はそこで、性別の公式と呼ばれる論理式を提示し、さらに「女なるものは存在しない」と定式化した。このテーゼは、ラカンの男性中心主義と曲解され、多くのフェミニストから批判を受けることになる。しかし詳細にセミネール20巻を読み進めれば、これを男性中心主義と解することがほとんど不可能であることが分かる。
贈与という概念をひとつの手がかりとして、心理臨床を再考察する研究の最終年は、セクシュアリティをめぐるラカンの言説を導きの糸として、絶対的な「贈与」に関わる神話の分析を行い、更にそこで得られた知見から新たな治療論を展望した。フロイトが『終わりある分析と終わりなき分析』で記したように、心理臨床において、治療の終わりは議論の絶えない主題である。フロイトは分析治療がどうしてもそこから先には進まない「岩盤」=去勢コンプレクスを前に、ある種のためらいをみせるが(生物学への傾斜)、ラカンはそこに留まることなく、「幻想の横断」、後には「症状への同一化」という考えを前面に打ち出す。本研究は後者の概念を贈与そしてセクシュアリティの問題と併せて再考することで、そこに含まれる治療的意義を示した。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2010

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Hospitality in Kawabata's House of the Sleeping Beauties2010

    • 著者名/発表者名
      Haruki Namiko
    • 雑誌名

      American Imago

      巻: vol.67,no.3 ページ: 431-440

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Le reel du corps selon Lacan-A propos du drame dans Hamlet2010

    • 著者名/発表者名
      Haruki Namiko
    • 雑誌名

      Les lettres de la SPF

      巻: no.24 ページ: 203-210

    • 査読あり
  • [学会発表] The Lacanian "Real" of Body -For Hamlet2010

    • 著者名/発表者名
      Haruki Namiko
    • 学会等名
      The 27th International Literature and Psychology Conference
    • 発表場所
      University of Pecs, Hungary
    • 年月日
      2010-06-25

URL: 

公開日: 2012-07-19  

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