細胞膜リン脂質二重層の内層に局在するホスファチジルセリン(PS)の、細胞の活性化やアポトーシスなどによる細胞外への露呈(PSのフリップ・フロップ)のメカニズムを明らかにする目的で、当該年度はまずIL-2依存的に増殖するKHYG-1細胞を用いてPSのフリップ・フロップの検討を行った。KHYG-1細胞の培養液からIL-2を除去した際にはcaspaseの活性化と共にPSの露呈が確認されたが、その後のIL-2の添加後にはPSの露出が顕著に抑制されることがFACS解析で明らかになった。このことから、KHYG-1細胞においてIL-2を枯渇させた場合、PSのフリップ・フロップを媒介する分子群が活性化し、IL-2添加によりPSのフリップ・フロップ関連分子群の不活性化あるいはPSを細胞膜の内側に移送する分子群(アミノリン脂質局在化酵素関連分子群)が活性化したことが示唆された。また、本研究ではsiRNAを用いて遺伝子発現を網羅的に抑制し、PS露呈の阻害を指標としたスクリーニングを行うため、当該年度はenzymatic production of RNAi library (EPRIL)法で多様なsiRNAライブラリーの作成を行い、細胞への移入効率の高いsiRNA発現レトロウイルスベクターに組み込んだ。次年度はKHYG-1細胞にsiRNA発現レトロウイルスベクターを感染させ、±IL-2など様々な条件下でフリップ・フロップ関連分子の絞込みを行っていく予定である。
|