本年度は、3つのテーマのうち2に重点的に取り組み、1・3にも一定程度の進展をみた。 1、売春婦管理史料の史料学的分析を進めるために、長野県立歴史館所蔵の信濃国内の宿場・温泉場の飯盛女・湯女関係史料の調査や、長崎歴史文化博物館所蔵の肥前国長崎における幕府公認遊廓関係史料の調査を実施するなど、フィールドを広げて史料収集をおこない事例蓄積の進展をみた。 2、幕府のみならず諸藩の政策動向もふまえて近世売買春の構造的特質を理解するという立場から、奥州二本松藩を中心に売買春政策の特質を検証した。この関連で、支配の様相を解明するために、郡山市歴史資料館が所蔵する同藩領郡山宿伝来の御用留帳およびそれに類する史料の悉皆調査をおこなった。その成果として、「近世後期の宿駅再建と売買春政策-二本松藩領郡山宿を中心に-」(東北近世史研究会夏のセミナー)・「近世後期二本松藩における都市振興政策と売春業-郡山宿を中心に-」(遊廓社会研究会)・「近世後期の都市振興政策と売春業-奥州二本松藩を事例に-」(千葉歴史学会例会)の3口頭報告をおこなった。また、近世期における全国の売春婦設置状況一覧、および売買春関連の幕府諸藩仕置例を悉皆的に収集・電子化したデータベースを作成した。これにより、幕府諸藩の売買春関連の通時的・全国的な政策傾向を把握することが可能になった。 3、遊女屋奉公人の一類型である遣手奉公人の実態解明のため、肥前国長崎丸山町・寄合町遊廓における遊廓関係史料の収集を実施した。
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