1.本研究者は、従来無視されてきた湧昇ドームと気候変動モードとの関係に着目し、渦解像海洋大循環モデルと大気海洋結合モデルを詳細に解析することで、大西洋南北モードが亜表層に存在するギニアドームと密接に相互作用していることを発見した。これは海表面にのみ注目してきた南北モードの研究に対し海洋内部の変動の重要性を指摘した画期的な発見である。この成果は大西洋南北モードの理解のみならず、そのモデリングや予測精度向上に大きく貢献することが期待されるため、国際誌や学術会議等で発表し、世界の気候研究に積極的に貢献していくことが肝要である。そこで、本年度はこの分野をリードする研究者と深く議論し、この研究を洗練させていった。具体的には大西洋の海洋変動が季節にフェイズロックされる理由や、解析したモデルのバイアスやパラメタリゼーションの依存性について考察した。更に太平洋のエルニーニョ現象や北大西洋で顕著に現れる北大西洋振動とのテレコネクションについても議論した。その結果、本研究成果を詳しく議論した論文は国際誌に受理され、学会発表でも大きな評価を得た。 2.渦解像大気海洋結合モデルを解析したところ、大西洋の土屋ジェット(南赤道潜流と北赤道潜流)が再現されていることを確認した。結合モデルで再現していることを確認したのは、私の知る範囲では世界でも始めてである。特にギニアドームとの関連が期待される北赤道潜流に注目すると、北半球の春に当たる3-4月に、ジェットのコアが顕著に確認できる。これは表層を流れる北赤道反流が弱化するためであろう。今後はこの3-4月に顕著に確認できる北赤道潜流を大気海洋結合モデルで再現することがどのように重要なのかを、気候変動の再現性に注目して調べていく。
|