研究課題
本年度は、支援システムの開発にむけて、次の3点を主に検討した。1.アセスメント方略の開発:小中学生を対象に、読字・書字に関する臨床症状チェックリストを開発・適用し、ひらがな音読能力との関連を検討した。結果、チェックリストの信頼性・妥当性示され、音読課題との関連性を認めた。臨床症状と音読課題の成績から、発達性ディスクレシアを良好な特異度・感度で弁別可能であった。読み書きの臨床症状を体系的に捉えるアセスメント項目開発は本邦において先駆的であり、今後の臨床応用や医学的診断において有用であると考えられた。2.発達的支援に対する客観的評価の試験運用:発達的支援を神経生理学的なエビデンスに基づいて評価するために、評価法の適用可能性を検討した。自閉症スペクトラム障害(ASD)男児4名を対象に、SSTを行った。SST開始前および終了後に、顔認知課題を実施し、課題遂行中の眼球運動を評価した。結果、対象児4名のうち、2名ではSST前後において注視領域の変化が確認された。顔認知の際の眼球運動を鋭敏かつ非侵襲的に測定し、詳細な解析を加えることにより、発達的支援に対するエビデンスに基づいた客観的評価が可能になると考えられた。3.神経生理学的な評価法の模索:脳機能の観点からPDDの社会性を評価するために、測定・課題設定に関して基礎的検討を行った。健常成人を対象に新規の自己顔認知課題を実施した。課題遂行中の前頭前野周辺における脳血流動態をNIRSによって測定し、並行して眼球運動を記録した。結果、自己顔認知時は、他者顔認知時と比較して、右下前頭回における酸化ヘモグロビン積分値が有意に上昇することが示された。一方、脳機能と眼球運動との関連は薄いことが示された。実施した課題は、社会性の一側面を脳機能の観点から表現・評価可能なものであり、次年度以降にPDD児や健常児への応用が期待できるものと考えられた。
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脳と発達 (未定)(印刷中)
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東北大学大学院教育学研究科研究年報 58
ページ: 149-162