蛋白質はポリペプヂドが正しい立体構造をとることで機能する。蛋白質の中にはシャペロニンGroEの助けなしに正しい立体構造をとれないもの(GroE依存基質)が存在する。この理由を明らかにするために、GroE依存基質とGroEに依存しない蛋白質を比較した。先行研究において、GroELへの細胞内での結合頻度から、GroE依存基質が予測されていた。そこで、細胞内でフォールディングアッセイを行い、推定GroE依存基質のGroE依存性を解析した。結果、推定GroE依存基質の4割はGroE依存基質ではないことが明らかとなった。この結果は、メタボロミクスやプロテオミクスの解析によっても支持された。この4割とGroE依存基質、さらに細胞質全体の蛋白質は、アミノ酸組成、試験管合成時の凝集のしやすさ、好む立体構造が異なることが明らかとなった。特に、GroE依存基質はGroEが存在しない試験管合成時に凝集するものが濃縮されていること、アラニンとグリシンの含量が高い蛋白質が多いことが特徴であった。また、GroE依存基質のホモログのフォールディングを解析したところ、同じ生物でのホモログではGroE依存性が保存される傾向があること、GroEを持たない生物のホモログはGroEに依存しないことが明らかとなった。特にGroEを持たない生物のGroE依存基質ホモログは大腸菌のGroE依存基質と比べてアラニン、グリシンの含量が低く、アラニンとグリシンの含量の高さがGroE依存性に関与していることを支持した。また本研究で同定したGroE依存基質の分布や特徴は、シャペロンが蛋白質や生命システムの進化に関与してきたという仮説を支持した。
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