「若年非正規労働者の労働組合の特質および意義に関する労働社会学的考察」という研究課題に対し、20年度は主に関西非正規等労働組合(ユニオンぼちぼち)への参与観察およびインタビュー調査と首都圏青年ユニオンやフリーター全般労働組合など東京の労働組合の調査を主に行った。ユニオンぼちぼちへの調査では、組合結成時の中心メンバーに対するインタビューを行い、結成過程やその過程で活用したネットワーク・資源などを明らかにした。東京の労働組合では、主に首都圏青年ユニオンへの調査を重点的に行った。まず19年度末から20年度にかけて実施しか組合員全員を対象としたアンケート調査の集計をし、さらに回答者のうち聞き取りが可能だという組合員にインタビューを実施した。また、これまでの全ての加入書を見せていただき、加入者全員の加入時期や年齢、雇用形態などを把握した。その結果、首都圏青年ユニオンが他の個人加盟労働組合よりも高い定着率を保っていることなどを明らかにした。以上の調査結果をまとめ、研究ノート「「若者の労働運動」--首都圏青年ユニオンの事例研究」を『コア・エシックス』Vol.5において発表した。また、『生存学』Vol.1に掲載された「働くこと、生きること、やりたいこと--「新時代の日本的経営」における<人間の条件>」では、現在の若者の雇用問題と労働問題、そして労働運動と生存運動を包括的に捉える枠組みを提示することを、労使関係論の蓄積などをもとに試みた。これらの成果は、現在の注目されている若年非正規労働者による労働運動に関する基礎的なデータおよび考察であるという点て非常に重要な意義を有している。
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