2006年9月に打ち上げられた太陽観測衛星「ひので」によって太陽全面を覆う大量の短寿命水平磁場が発見された。私はこの短寿命水平磁場についての以下の研究を遂行した。 第一の研究は、短寿命水平磁場の起源に関するものである。短寿命水平磁場は太陽全面に存在する。この普遍性は、「太陽全体に働くグローバルダイナモとは異なる、対流による局所的なダイナモが駆動しているのか?」というダイナモの観点から、非常に興味深い。私は、修士課程に引き続き研究を進め、磁場のたくさん存在する活動領域と、磁場がまばらにしか存在しない静穏領域で、短寿命水平磁場の性質(発生頻度、磁場強度分布など)に差がないことを示し、短寿命水平磁場が、ローカルダイナモによって駆動されていることを明らかにした。この成果は、Astronomy&Astrophysicsに発表した。 第二の研究は、短寿命水平磁場の3次元構造に関するものである。短寿命水平磁場が消滅する際に、太陽表面下へ戻っていくのか、それとも太陽表面上空の彩層へ到達しているのかを明らかにすることは、彩層・コロナ加熱の観点から重要である。これまで用いてきたMilne-Eddington大気を仮定した偏光線輪郭の最小二乗フィットでは深さ方向に一定の磁場強度やドップラー速度の物理量しか得られず、水平磁場の消滅過程に関しては推測の域を出なかった。そこで、磁場や速度の深さ方向の情報を考慮できるSIR(Stokes Inversion based on Response function)の手法を用い、高さ方向の物理量を得て短寿命水平磁場が太陽表面に出現して浮上していく様子を3次元的に捉えることに成功した。現在、この成果をまとめ、論文を執筆中である。
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