研究課題
マラリアは、マラリア原虫によって引き起こされる重大な感染症の1つである。全世界で1年間に3億~5億人の患者、150万人~270万人の死者があると報告されている。Natural killer (NK)細胞受容体であるKiller Immunoglobulin-like Receptor(KIR)およびそのリガンドであるHuman Leukocyte Antigen (HLA)クラスI遺伝子は、非常に多様性に富んでおり、感染症などによってその多様性が維持されるような選択圧が働いていることが示唆されており、マラリアの感受性および抵抗性に関与している可能性が考えられる。そこで本研究では、タイ人感染者の以下の3集団、軽症マラリア(M)203名、非脳性重症マラリア(S)165名、脳性マラリア(C)109名を解析対象とし、KIR遺伝子の有無を調べてKIRとHLAリガンドの組み合わせがマラリア重症化の感受性に与える影響を調べた。その結果、KIR2DL3とHLA-C1との組合せが脳性マラリアと有意に関連を示すことが明らかとなった(C vs S:オッズ比3.44 P=0.001、C vs M:オッズ比2.90 P=0.004)。近年、NK細胞の分化過程においてKIRとその認識リガンドの組合せによりNK細胞の機能的成熟の誘導性に差があることが報告された。KIR2DL3とHLA-C1を同時に有する個体で脳性マラリア発症率が高いという今回の結果は、この組合せの個体のNK細胞反応性が脳性マラリアの発症に関与している可能性を示唆している。
すべて 2009
すべて 学会発表 (3件)