年度(2009年3月)に行った深層面接の結果を分析し、一般有権者が政治を捉える枠組みの詳細を検討した。その結果、「政治的概念」「地方行政」「会話の通貨」「仕事との関連」「個人の生活」という5つの枠組みが析出された。また、それらの枠組みは、「公共領域」「職場」「私生活」という3つの領域に分けて整理することが可能であった。政治的エリートの議論においては、公共領域と私的空間が区別されるのに対して、一般有権者は両者の区別があいまいであり、私的空間との関連から政治を捉えていることが明らかになった。 また、知見の一般化可能性を確保するため、ランダムサンプリングによって抽出された一都三県の有権者1200名を対象とした郵送調査を行った。また、この郵送調査においては、一般有権者が政治を捉える枠組みの違いが何をもたらすのかを明らかにすることも目的とした。調査の結果、深層面接において明らかになった枠組みが概ね再現されたのに加えて、「地域行政」「政治的概念」といった公的領域から政治の捉える以外にも「個人の生活」「仕事との関連」といった私的領域に基づいて視点から政治を捉えることも、政治的有効性感覚や政治参加の促進につながることが明らかになった。 加えて、日本版総合社会調査(GSS)2008年データを用いた二次分析を行い、公的領域におけるソシオトロピックな参加活動としての側面と、私的領域におけるエゴセントリックな消費活動としての側面を併せ持つ環境保護的バイコット行動について検討を行った。分析の結果、環境保護的バイコットにソシオトロピックな側面とエゴセントリックな側面が同居するという知見が支持された。さあ公共の問題に参加するぞと構えなくても日常生活を通じて社会に参加することが可能であれば、社会参加に対する心理的な垣根は低くなる。こういった活動は、一般有権者の社会参加、政治参加を促す上で、大きな可能性を秘めているといえる。
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