地球深部物質の電気伝導度は、マントルの組成や地球磁場の生成、伝達過程を議論する上での重要な物性値として期待されている。しかし、高圧実験において下部マントル以深の条件での電気伝導度測定は試料サイズが微小であるため困難を伴う。そのため、下部マントル以深条件での物質の電気伝導度測定例はほとんどなかった。申請者はレーザー加熱式ダイヤモンドアンビルセル高温高圧発生装置を用いた最下部マントルに相当する温度圧力条件での電気伝導度測定技術を世界で初めて確立した。その技術を用いて平成20年度に以下のことを行った。 「パイロライト、MORB組成を持つ岩石の電気伝導度測定」 私は昨年度までの研究において、下部マントルの主要構成鉱物の電気伝導度測定を行ってきた。しかし、地球のマントルはそれらの鉱物の集合体(岩石)である。電気伝導度観測データと比較し、地球内部についての理解を深めるためには天然の組成の岩石の電気伝導度測定実験を行う必要がある。そこで私は代表的な下部マントルの組成であると考えられているパイロライト組成の岩石と、海洋底の主要岩石であるMORBの電気伝導度測定実験を下部マントル全域の温度圧力範囲で行った。その結果を用いて下部マントルの電気伝導度プロファイルを構築した。今後、本研究の結果と観測結果を比較することで下部マントルの組成や温度などに新たな制約が与えられることが期待される。この研究結果は現在、国際科学雑誌への投稿準備中であり、平成20年度に開催された学会において口頭発表された。
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