研究概要 |
□研究の背景 幻聴は,統合失調症患者自身の発話内容,もしくは内言であることが示されている(McGuigan,1966)。それを踏まえて,ソースモニタリングの観点から,幻聴の生起,抑制メカニズムを明らかにするための研究を行った。具体的には,幻聴研究において,現在まで行われていた研究は,「自分の発言を"他人の発言だ"」と誤判断する過程の検討であった(e.g.,Bentall,1990)。この過程を細分化して、さらに詳しく,「現実には自分が発言したにもかかわらず"自分は発言していない"」と誤判断する過程に着目して検討した。 ○研究1 ・まず健常大学生180名を対象に、幻聴様体験をたずねる尺度(AHES)を作成した。この成果を心理学研究誌に投稿し、現在修正後採択決定である。その後、世界中の研究者に用いられることを目標に、短縮版幻聴様俐験尺度を作成し、さらに幻聴メカニズムについて質問紙調査をもとに検討した。その結果、幻聴には、音楽や内言が起源となる幻聴と妄想が起源となる幻聴に分類できることが明らかになった。そして、音楽や内言が起源となる幻聴と、陽性統合失調症の要因として挙げられる「」が妄想が起源となる幻聴を説明することが明らかになった。この結果は、現在Psychiatry Researchに投稿中である。 ○研究2 ・まず健常大学生50名を対象に幻聴傾向と、「言ったかどうか」というソースモニタリングの関係について検討した。学習時に、PCのモニタ上に呈示された単語を「発声」「口真似」「想像」のうちのどれかで学習させた。その後、モニタリング時に、各々の単語を「学習時に発声したかどうか」についてたずねた。その結果、発声>口真似>想像の順に、「発声した」と判断する傾向が高くなった。この結果は、学習時に得られた発声の自己主体感(自分が声を出しているという感覚)が、その後の「発声したかどうか」の指標となることを示唆するものであり、今後ソースモニタジング課題を用いて、発話の自己主体感を検討できる可能性を示唆すると考えた。この結果は、現在Quatery Journal of Experimental Psychologyに投稿し、現在修正中である。
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