統合失調症は、自己主体感(自分自身が行動を起こしているという感覚)の障害であると考えられている。また、「自分が発話している」という感覚の障害であると言われている幻聴と、「自分が考えている」という感覚の障害であると言われている思考吹入の関係について、「発話=自分の考えをアウトプットすること」という観点から関係が深く、両者を検討する必然性がうかがえる。 ●研究1:大学生約100名を対象とし、ソースモニタリング課題を用いて発話の自己主体感に関わる要因について検討した。参加者は、単語を「聴く」「発話する」「内言する」「口真似する」のいずれかでインプットした後、モニタリング段階ではそれぞれの単語を「発話したか否か」について答えた。その結果、発話をイメージすること、口を動かすこと、声のフィードバックが得られること、その声が自分の声と同じであることが、それぞれ「発話した」判断に関わることが明らかになった。この結果の一部はQJEPに投稿し、受理された。 ●研究2:大学生約200名を対象とし、DRMパラダイムを用いて、幻聴傾向と思考吹入の関係について検討した。DRMパラダイムは、学習時に提示しないクリティカル語(ねむい)と、15語の連想語からなるリストで構成されている。被験者はリスト語(ベッド、おやすみ、おきる、つかれた、ゆめ、さめる、いびき、ふとん、いねむり、ひるね、あんらく、あくび)を学習し、後に再認を求められた。その結果、幻聴傾向とクリティカル語虚再認率に正の相関が見られ、幻聴傾向が高いと思考吹入が起こりやすいことが示唆された。この結果はConsciousness & Cognitionに投稿し、受理された。
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