(1)磁気リコネクションのトリガー過程の研究は過去から行われているが、未だその全貌は解明されていない。その中で、イオン温度非等方性という新しいパラメタを導入し、以下の結論を得た。(1)初期イオン温度非等方性が1.5を超える時のみ、テアリングの飽和レベルが爆発的に増加する。(2)空間3次元性はリコネクション過程を早めるだけで、飽和レベルに顕著な働きをしない。(3)磁気島中心で発達するガス圧力蓄積タイムスケールと、リコネクションフラックスの成長タイムスケールとの時間差が飽和レベルを決定づける重要な要素である。 (2)磁気リコネクショントリガー後は電流層構造が大規模な時空進化を遂げ、幾つかの領域でリコネクションによる電子加速が起こると期待される。大規模な電流層で発生する磁気島融合過程を詳細に調査し、動的な磁気島融合で発生する電場が電子の相対論的加速を可能にする事を突き止めた。また、磁気島融合が多段的に促進されると、電子加速のプロセスが切り替わることを示した。この新たな加速過程は、磁気島融合の度に現れるので、磁気島融合が続く限り電子は加速し続ける事を予言した。 (3)地球磁気圏境界層的な状況で発生する磁気リコネクションは、(1)境界層を跨ぐ密度ジャンプ、(2)境界層を跨ぐプラズマ流のシア、そして(3)境界面に対して垂直な向きに発生する磁場(ガイド磁場)によって特徴付けられる。これら効果の組み合わせによる効果の検証を実行した結果、プラズマ密度が非対称な系でプラズマ流のシアとガイド磁場との組み合わせがX-lineを磁気圏境界層に沿ってスライドさせる事を明らかにした。系統的な調査によって、X-lineのスライドは(1)シアの効果が卓越するときイオン流に依って規定され、(2)ガイド磁場の効果が卓越するとき電子流に依って規定されることが示された。
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