研究概要 |
富栄養化に対する窒素除去能として脱窒過程が重要であり、硝酸の窒素安定同位体比を用いた解析手法が発展してきたが、複雑な窒素循環解析には適応限界があり、また、浄化能としてだけではなく温暖化ガスである一酸化二窒素の挙動も同時に評価する必要がある。本研究では、窒素酸化物(硝酸、亜硝酸、一酸化二窒素)の酸素安定同位体比に着目し、微生物培養実験及び湖沼における観測から、新たな窒素循環解析手法を確立することを目的としている。 平成20年度は、湖沼における観測として、長野県にある木崎湖及び深見池における調査と測定を行った。両湖沼における観測は平成19年度から行っており、平成20年度は、4月〜12月、3月に両湖沼の各成層期及び循環期においておおよそ月1回のサンプリングを行った。窒素循環解析に用いるサンプルとして、アンモニウムイオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、溶存一酸化二窒素の濃度・窒素及び酸素安定同位体比測定用サンプルを採取し、さらに、水,溶存酸素の酸素安定同位体比測定用サンプルを採取した。すでに当該研究室において測定方法がルーチン化されている一酸化二窒素の濃度・安定同位体比、硝酸イオンの濃度・安定同位体比、水の安定同位体比については測定を行い、解析を進めている。また、亜硝酸イオン、溶存酸素の安定同位体比については、測定のルーチン化に向け試料精製ライン等の作製を行い、標準試料による測定方法の確認を行った。 次年度は、未測定試料の測定及び解析を行い、論文投稿する予定である。また、微生物培養実験を行い、硝化・脱窒過程における窒素酸化物の酸素安定同位体比の挙動を明らかにし、論文投稿する予定である。
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