ドイツおよびEUにおいて、企業の組織再編が計画される際の従業員代表の役割について、研究を行った。 そのため、まず、ドイツの従業員代表である事業所委員会の役割について、概要をまとめ、そして、当該事業所に所属する労働者の差別禁止や不利益取扱の禁止について、事業所委員会はどのような役割を果たすのか、について詳細な分析を行った。これらの研究により、ドイツの事業所委員会は、就業形態、性別、人種または年齢等の異なる労働者を公正に代表し、使用者に対して労働者の意見を適宜に公正に反映する仕組みを有していることを明らかにした。 そして、上記の研究成果を踏まえ、企業組織再編の際の事業所委員会の役割について、検討を行った。ドイツでは、企業組織再編は主に、(1)事業譲渡(民法典613a条)、(2)合併・分割(組織変更法・Umwandlungsgezetz)、(3)事業の閉鎖や縮小等の措置が典型例である事業変更(Betriebsanderung)(事業所組織法111条ないし113条)がそれぞれ規制されており、事業所委員会は、(2)(3)の場面で大きな役割を担う。そして、ドイツでは、企業組織再編の際に、事業所委員会が関与することにより、労働者の権利を保護する仕組みを整備している。しかしながら、事業所委員会は労働者保護のみを主張するのではなく、企業の組織再編の必要をも考慮し、その手続きに関与するバランスの取れた制度を構築している。という分析結果を得た。この研究は、これまで一般的であった「ドイツ労働法=労働者の権利を保護する法」との観点からの研究との関係で、新たな視点を提示した。
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