研究概要 |
メタスチン(キスペプチン)ニューロンは,GnRHニューロンを介して生殖機能を制御する可能性が示唆され,生殖内分泌学においてはGnRHの発見以来の大きな研究テーマになると期待されている。私は昨年までに,メダカを用い,メタスチンニューロンを哺乳類以外において初めて同定し,in situ hybridization(ISH)法などを用いて,mRNAレベルでの研究を既に行ってきていた。この研究成果は大学からのプレスリリースも行い,報道でも大きく取り上げられた。本年度は,メクスチンニューロンとGnRHニューロンの関係を形態学的な側面から観察した。(1)キスペプチンニューロンを免疫組織化学によって可視化することに成功した。実験系として極めて有用なメダカにおいて高い精度でキスペプチン神経系の全体像が得られ,キスペプチンニューロン系を研究するための強力な基盤を築いた。(2)DIG標識ISH法のプロトコルを改良し,受容体のわずかな発現でも検出可能にした。その結果,キスペプチン受容体1,2の脳における発現を確認できた。受容体の局在は,キスペプチン免疫陽性線維の投射とほぼ一致した。(3)キスペプチン受容体1,2は脳の限られた部位に局在し,特に下垂体機能を制御する視索前野-GnRHニューロンの局在する視索前野に多く存在することを確認した。(4)ところが,視索前野GnRH mRNAと二重ISHを行ったところ,GnRHニューロンはキスペプチン受容体を発現していないことが明らかになった。しかし視索前野GnRHニューロンから約50μm内側に位置する細胞群がキスペプチン受容体1を発現していることが明らかになった。以上より,メダカにおいてキスペプチンはキスペプチン受容体を発現する,視索前野GnRHニューロンのすぐ内側に位置する介在ニューロンを介して視索前野GnRHニューロンの機能を制御していることが強く示唆された。
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