研究概要 |
(1)CuCl励起子ポラリトン二光子選択則の実験的検証 連続ヘリウムフロークライオスタットを用いて液体ヘリウム温度まで冷却したCuCl(111)面薄片結晶にチタンサファイアレーザーから発生した中心波長769nm,パルス幅4ps程度の光パルスを照射し、上枝ポラリトンを二光子励起した。上枝ポラリトンからの発光(SHG,385nm)を後方透過配置で集光し、分光器およびOMA(冷却CCD)で受光しか。この際、入射光の偏光を直線、及び円偏光にし、そのどちらにおいてもSHGが発生することを発見するとともに発生したSH光の偏光状態も調べた。 (2)CuCl励起子ポラリトン二光子選択則の理論的考察 前項の実験的結果を踏まえて理論的な考察を行った。まず、結晶格子の存在によって角運動量が保存しない可能性に注目した。並進運動量保存の議論とのアナロジーから項目(1)の実験結果を説明できることが明らかになった。同時に、この実験および理論的考察が結晶の対称性に基づいたテンソルの議論とも矛盾しないことを確認した。一方で群論における点群の議論によってはこの結果が説明できず、空間群の議論を適用しなければならないことを明らかにした。以上の理論的考察を進めると共に、光の角運動量に関する様々な先行研究について動向を調査した。 (3)CuCl結晶サンプルの作製 上記の実験及び励起子分子の実験に向けてサンプルの作成を行った。受け入れ研究室に保管されていた装置を再立ち上げし、最適な温度条件、圧力条件を探しながら気相成長による結晶作製を行っている。上記の実験においてもここで作製したサンプルを用いた。現在もより上質なサンプルを作製するため条件の改善を試みている。
|