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2009 年度 実績報告書

1830、40年代イギリスにおける物語詩的抒情詩の研究

研究課題

研究課題/領域番号 08J10186
研究機関東京大学

研究代表者

田代 尚路  東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)

キーワード英文学 / 19世紀詩 / ヴィクトリア朝詩 / アルフレッド・テニスン / イギリス
研究概要

平成21年度においては、前年度の研究の成果を発展させつつ、物語詩的抒情詩の分析研究を進めた。前年度に引き続きアルフレッド・テニスンの詩を主たる研究対象とし、ロバート・ブラウニング及びエリザベス・ブラウニングの詩も適宜参照したが、その他にもウォルト・ホイットマンとジョン・キーツの作品群にも焦点を当てることで、物語詩的抒情詩を歴史的な座標軸において捉えるべく努めた。具体的には、まずはテニスンの物語詩的抒情詩について、「待つ」ことを扱った詩であるという結論を導き出した。テニスンの詩においては、誰かの到来を待つ人物が描かれていることが多いが、待つという状況設定が物語的枠組の中で提示され、またその待つ人物の焦燥感に満ちた心理が抒情的に語られることで物語詩的抒情詩が成立をしている点を論証した。「待つ」という様態に注目をすることで、一見何の関係性もないように見えるテニスンの初期詩三篇の類似性と連続性を指摘した点がこの議論の最大の成果である。次いで、テニスンの抒情性について明確に把握するために、ホイットマンとの比較研究を行った。ホイットマンによるテニスン論を参照しつつ、テニスンの抒情性には空疎さが見られる点を明らかにした。空疎さとはこの場合、ある感情を詩の中で指し示す場合に、その感情の理由や根拠を不明瞭にしていることを指す。テニスンの物語詩的抒情詩において描かれている感情は、詩人本人のものなのかそれとも語り手のものなのか不分明であることが多いが、そのような境界の曖昧さを支えるものとして空疎さが見られるのだと考えられる。そしてその上で物語詩的抒情詩の系譜を再確認し、テニスンが持っていた問題意識の萌芽はキーツのLamiaにおいて見られる点を指摘した。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2010 2009

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] 待つことの諸相-「シャロットの妖姫」論2009

    • 著者名/発表者名
      田代尚路
    • 雑誌名

      リーディング 30

      ページ: 2-8

    • 査読あり
  • [雑誌論文] C.B.リックスが読むT.S.エリオット2009

    • 著者名/発表者名
      田代尚路
    • 雑誌名

      T.S.Eliot Review 20

      ページ: 97-102

    • 査読あり
  • [学会発表] 漏れ聞こえる声の系譜-キーツからテニスンヘ2010

    • 著者名/発表者名
      田代尚路
    • 学会等名
      イギリス・ロマン派学会第94回四季談話会
    • 発表場所
      大妻女子大学
    • 年月日
      2010-03-13
  • [学会発表] ホイットマンの詩が空疎であるとき-"finest verbalism" という視点から読む "Tears"2010

    • 著者名/発表者名
      田代尚路
    • 学会等名
      日本アメリカ文学会東京支部1月例会
    • 発表場所
      慶應義塾大学
    • 年月日
      2010-01-23
  • [学会発表] 不安の詩学-テニスンの劇的独白詩について2009

    • 著者名/発表者名
      田代尚路
    • 学会等名
      イギリス・ロマン派学会第35回全国大会
    • 発表場所
      明星大学
    • 年月日
      2009-10-04

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公開日: 2011-06-16   更新日: 2016-04-21  

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