研究課題
本研究課題の目的である、約12万年前の温暖期(最終間氷期)における近畿地方での森林変化を明らかにし、温暖期の気候システムの変化が森林に及ぼす影響について解明するために、本年度は以下の内容の研究を実施し、研究成果の公表を行なった。1.最終間氷期における森林変遷の特徴と気候システム変化の影響の解明:現在の温暖期と比較した、最終間氷期の森林変遷の共通性と特異性とを明らかにするために、琵琶湖高島沖堆積物の最終間氷期の層準と、琵琶湖ピストンコアの現在の温暖期の層準にあたる花粉分析結果について、花粉組成や年間花粉堆積量の対比を行なった。その結果、最終間氷期の前半には現在の温暖期と比べてブナが多く生育していた事、さらに後半ではアカガシ亜属から成る常緑広葉林の拡大が少なかった事が示された。現在よりも海水準が高く、夏の気温も温暖であったとされる最終間氷期において、常緑広葉樹林が制限されていたことの要因として、最終間氷期の前半で冬の日射量が少なかったことに起因して寒冷な冬の気候が成立したこと、さらに後半では急激な夏の日射量の低下による冷涼な夏の気候が成立したことが考えられた。2.成果の公表:最終間氷期を含む過去約14~3万年前における琵琶湖高島沖、神吉盆地堆積物の花粉分析結果について、学会誌に公表した。また、平成21年7月6日から11日にかけてアメリカのオレゴン州立大学で開催されたPAGES(Past Global Changes)国際会議に参加し、本研究の成果を発表した。
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