研究概要 |
本年度はアラタ体における転写因子のJH生合成への関与を検証した。予備実験により、アラタ体におけるエクダイソン受容体のEcR-A,B1,USP-1,2、転写因子E75A,B,C,D,BHR3,4,BRの発現変動について確認すると、いくつかの因子は体液中のエクダイソン濃度の変動に呼応するような変動が確認きれた。 そこで、アラタ体におけるエクダソン受容体・転写因子群の20E応答性をin vitro組織培養系を用い詳細に検証した。その結果、EcR-A,USP-2がE75A,B,BHR3,BHR4が誘導され、EcR-B1の発現は12時間から顕著に抑制された。またBrは影響が確認されなかった。皮膚の発現と比べたところEcR-B1、Brの20E応答性が異なっていた。さらに、アラタ体・絹糸線・脳・脂肪体をそれぞれ20Eで培養したところ、EcR-B1はアラタ体においてのみ発現抑制された。これらのことから、アラタ体とその他の皮膚や脳・絹糸線・脂肪体におけるEcR-B1の20Eへの応答性の差異が、アラタ体特異的な転写因子群の発現の挙動を制御していることが考えられる。続いて、タンパク合成阻害剤のAnisomycin(10mg/ml)を20E(0.5mg/ml)と共培養した結果、EcR-A,USP-2,E75A,B,BHR3,BHR4は20Eにより直接誘導されることが確認された。 次に、昨年度に確立したRNAi法を用いて、アラタ体におけるE75遺伝子の発現を抑制し、その他の転写因子・JH合成酵素等の発現に影響が出るか確認を行った結果、BHR3の発現には影響を与えず、BHR4遺伝子の誘導が抑制されていた。このことから、E75AもしくはBがBHR4の発現を制御していることが考えられる。また、このときJH合成酵素遺伝子であるAACT, MevK, JHAMTの発現には影響が確認されず、この時期E75遺伝子のJH合成酵素遺伝子への関与は確認されなかった。これらの結果すり5齢初期における時期・組織特異的なエクダイソンカスケードの制御が行われていることが考えられる。
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