本年度の目標は、意思決定のために多角的な視点からの情報分析作業を支援する、汎用的な対話的情報可視化インタフェースを構築することであった。本研究で対象とする意思決定は、ユーザの要求が不明確で、探索的情報検索と、情報分析を伴って行われる意思決定である。本年度の目標を達成するために、サブゴールとして、(1)ユーザの外的情報検索意欲を向上させる、(2)ユーザの意思決定方略に応じた情報分析を可能にする、を設定した。(1)は、ユーザの意図に応じて、繰り返し外部にある関連情報(ユーザにとって既知ではない関連情報)を検索することが、より良い意思決定のために重要であると知られているため、サブゴールとして設定した。(2)は、ユーザが多属性を含む代替案の比較検討を行う際に、大きく分けて2種類の意思決定方略(相補的方略・非相補的方略)を用いることが知られているため、サブゴールとして設定した。提案手法は、可視化対象のオブジェクト同士の関連性に含まれる複数の属性の重みを、ユーザ自身の重要度に応じて変化させ、動的な可視化を行うものである。ユーザは、数値入力や式の作成により重要度を表現するのではなく、マウスのみの操作で視覚的に重要度を表現できる。また、ユーザは任意のタイミングで、重要度を反映した可視化表現を得ることができる。提案手法は、情報分析中にユーザの要求(嗜好)が変化しても柔軟に対応可能であり、明確な要求を満たす情報を効率的に探索する手法とは一線を画する。オンラインショッピングを対象にした被験者実験を行った結果、提案手法により、情報分析中のユーザの、新たな検索意欲を高めることが可能になったことを示した。また、柔軟に属性の重みを変更できることから情報分析中に変化するユーザの意思決定方略に応じた情報分析が可能になったことを示した。
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