本研究の目的は、バイオインターフェイスを精密にナノ構造制御し、これらを基盤技術とした高感度バイオデバイスを創製することである。在宅やベッドサイドでの臨床検査・診断デバイスを想定し、前処理なしで血液中の微量なホルモンや病原物質などの生体分子を効率よく検出できる臨床診断デバイスを実現する。そのために、血液から血漿成分を分離する膜と、標的分子を効率よく検出する表面からなるシステム構築を行っている。 標的分子を効率よく検出する表面については、バイオ分子の活性を維持したまま高密度に固相に固定化することが重要となる。そこでバイオ分子固定化可能なリン脂質ポリマーを合成し、さらにエレクトロスプレーディポジションを用いてナノ構造体を作製することにより、高密度バイオ分子固定化表面を創製した。そのポリマー組成、ナノ構造体の形状、水での形状安定性がバイオ分子との反応に与える影響を系統的に評価し、高感度バイオ分子検出表面を創製するに至った。 血漿分離膜については、ろ過流量が大きく、血中のタンパク質の膜への非特異的吸着が少ない膜が必要とされる。そこでエレクトロスプレーディポジション法で空隙率の大きいナノファイバーを作製し、さらにナノファイバー表面をタンパク質の非特異的吸着を抑制するリン脂質ポリマーで修飾することにより血漿分離膜を作製した。分離能の評価を現在行っている。 今後、高感度バイオ分子検出表面と血漿分離ナノファイバーを組み合わせることにより、各種タンパク質を全血から前処理なしに簡便に測定するマイクロバイオ分析デバイスを創製する。
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