固体高分子形燃料電池は、携帯型定置型自動車型として実用化が期待されている。これは、電解質膜に陽イオン交換膜を用いるものであるが、近年、陰イオン交換膜を用いるアルカリ燃料電池も、触媒と利用可能な燃料が多様であること等から注目されているが、既存の電解質膜の耐久性が乏しいため実用化に至っていない。そこで本研究では、新規なアルカリ固体高分子形燃料電池用の電解質膜の開発を行った。 電解質高分子の骨格としては、耐熱性・耐酸化安定性に優れるポリエーテルスルホンを用い、官能基には四級アンモニウム基を用いた。モノマー構造には、かさ高く大きな自由体積を有するフェノールフタレインを用い、縮合重合により電解質ポリマーを重合した。電解質ポリマーは合成時に組成を調節することで、イオン交換容量を調節した。得られたポリマー溶液からキャスト膜を作製した後、四級アンモニウム基を導入し、0.5-1Mの水酸化ナトリウム水溶液を用いてイオン交換を行った。作製した電解質膜の定性分析と熱分析を行い、イオン伝導特性を測定した。 縮合重合により、十分に高い高分子量の電解質ポリマーの合成に成功した。作製した電解質膜は、30℃において9mS/cm、60℃において13mS/cmのイオン伝導度を示した。さらに、80℃のRO水中で48hr洗浄した後も、イオン伝導性はほとんど低下せず、高い耐久性を示した。本研究においては、全芳香族の主査構造を持つ新規なアニオン交換ポリマーの合成に成功し、イオン導電特性と耐久性の検討を行った。得られた新規なアニオン交換ポリマーは、分子構造の検討やミクロ相分離構造の制御によりさらに高い性能を得られると予想され、今後の電解質ポリマーの開発への方向性が示された。
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