本年度の研究では、近年の国際美術展が、市民社会といかに結びついているのかを重点的に調査研究してきた。特に、経済・政治的領域からなる社会的領域のグローバル化が顕著に進む90年代以降の国際美術展に焦点を当てながら、そのなかで顕著に目立つ市民参加の芸術活動に着目して、プロジェクトと市民社会との関係性を研究してきた。 具体的には、「別府現代芸術フェスティバル・混浴温泉世界」や、「大地の芸術祭・越後妻有アートトリエンナーレ」、「プラットフォーム・ソウル」などを主たる調査対象とした。また比較対象として、市民参加によって成立するクラシック音楽祭(サイトウ・キネン・フェスティバル松本)や、国外を含むコミュニティアートの実践、さらに美術館によるアウトリーチ活動なども調査した。 なお研究手法には、文献を中心とした研究調査と、フィールドワークによるインタビュー調査を用いている。また2009年度後期には「日本学術振興会・優秀若手研究者海外派遣」によって、英国のロンドン芸術大学(トランスナショナル・アート研究所)にて在外研究を行い、研究者や実践活動をおこなうアーティスト、ディレクターらと積極的に研究を通じた交流を図った. 以上の研究成果は、学術論文・研究報告、学会発表、その他において公表している。以下は、その内容をまとめたものである。研究実施状況については、各々の概要もご参照いただきたい。
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