レプトンの一種、正荷ミュー粒子がガンマ線と陽電子に崩壊する事象の探索を、2008年秋から開始した。この事象の有無は、レプトンフレーバーを保存する従来の素粒子物理がどのように拡張されるかを検証する材料となりえる。このために、ガンマ線検出器としてこれまでにない1000L規模の液体キセノン検出器を新たに開発する事で、今までのレプトン稀崩壊探索では検証できなかった小さな崩壊分岐比まで探る事が可能になった。特に本研究では、液体キセノン検出器の性能を評価し、正確なエネルギー・位置・時間を把握する事が当研究において重要になる。そこで、ミュー粒子から放出される目的のカンマ線と同レベルのエネルギーを持つガンマ線をパイオン崩壊から得て、2008年夏に液体キセノン検出器の性能評価を行った。この結果は日本物理学会で発表され、液体キセノン検出器の性能を把握できると共に、どこまでミュー粒子稀崩壊を探れるか見積もりが可能となった。更に、秋から3ヶ月に亘るミュー粒子崩壊の測定を経て、ガンマ線と陽電子の解析に移っている。測定中において、光検出器の変動や液体キセノン発光量の変動は定期的に測定され、各時点での検出器較正も行う事ができた。シミュレーションや他事象からのバックグラウンドの見積もりも順調に成されており、検出効率の評価も行われた。2009年においても引き続き崩壊事象を検出していくと共に、2008年に取得したデータからミュー粒子のガンマ線と陽電子への崩壊がどの程度で起こりえるか、研究の成果を公表する予定になっている。
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