研究概要 |
本研究の目的は,静的な3次元シーンにおいて,全体として不自然にならないような非透視投影図を半自動的に生成するシステムを作成することである.この非透視投影図の歪みの知覚は,人間の投影図中の奥行き手がかりの知覚と関連性が深い,なぜならば,人間は奥行き手がかりを元に3次元シーンを復元し情報を読み取っているからである.そこで,本研究では,3次元シーン中の奥行き手がかりの配置と非透視投影図の歪みの知覚との関係性を,視覚心理学実験を通して調べて行き,その結果から得られた知見を利用した非透視投影図設計システムを作成した.本研究では特に,奥行き手がかりの中でも,オブジェクトの大きさの知覚に重要な役割を果たす線遠近法手がかりと相対的大きさに注目し,以下のような2つの実験を行った.1点透視の投影図において,相対的大きさ手がかりが,線遠近法手がかりの配置に与える制限を調べる実験を行い,その関係性の定式化を行った.さらに,1点透視で行っていた上記実験のモデルを,複数組み合わせることにより複数の消失点を持つ透視図に適用可能にするための実験と定式化を行った.これらの実験から得られたモデルを元に,以下のようなシーン全体の歪みを半自動的に制御するシステムを作成した.本システムは,2次元投影図上でいくつかのオブジェクトの位置と大きさが与えられると,その制約を満たしつつ,全体として不自然さが感じられないように,実験から得られたモデルを元に,線遠近法手がかりの配置を計算し,その配置を元にシーン全体の投影図の歪みを生成する.また,副産物として,非透視投影で取り扱うカメラパラメータなどの操作に欠かせない,幾何変換や投影変換で用いられる行列の補間の知見を生かして,群集隊形制御のプロジェクトにも参加し,論文発表を行うことができた.
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