現在臨床で問題となっている光線力学療法(PDT)における副作用・光線過敏症を排除したPDT治療薬の創製を目指し、光増感能のoff/onを制御可能としたactivatableな光増感剤の開発研究を行った。申請時の計画通り、増感剤の核となる新たな分子の探索から研究をスタートし、独自の発想に基づき、これまでにないactivatable光増感剤の分子設計法を開発した。この分子設計法から、実際に新規光増感剤を開発し、activatable光増感剤として機能することを実験データより証明した。具体的には、以下の通りに研究を実施した。まず、光増感能を変化させるトリガーとして、汎用されているレポーター酵素であるβ-galactosidaseに着目した。レポーター酵素は、目的とする遺伝子の発現を可視化するために汎用されているタンパク質群であり、E.coli.由来のlacZ遺伝子産物であるβ-galactosidaseの活性測定は外部遺伝子導入の指標として幅広く用いられる。また、光増感剤としてはThiazole orange(TO)を選択した。TOはDNAなどの生体分子に結合し、それまでflexibleだった構造が固定されることで、強い蛍光性を示し、光増感能を獲得することが知られているユニークな特徴を持つ分子である。これら2つのツールを組み合わせることで、β-galactosidaseによりgalactosyl基を切り出す前後で、化合物の細胞内での生体分子への結合のしやすさを制御し、β-galactosidase存在下でのみ強い蛍光性、増感能を示すレポーター酵素認識型光増感剤を開発できると考え、TOに構造修飾を施し、galactosyl基を付加させたPhoTO-Galを開発した。培養細胞系にて、このPhoTO-Galのβ-galactosidase存在下における蛍光性、光増感能の変化について検討を行った。
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