研究概要 |
グルコースを用いて、さまざまな置換パターンを有するメチルセルロース誘導体モデル化合物の合成法を開発し、これらの合成を行なった。単糖モデル化合物では、1位および4位をメチル基で置換しセルロース鎖を再現した。2,3,6位には水酸基あるいはメチル基を導入し、全8通り(2^3=8)の置換様式をもつモデル化合物の合成に成功した。この合成法では、4位メチル基の代わりに糖残基を導入することで、二糖・三糖モデル化合物の合成が可能となるように工夫されたものである。 次に、グリコシド結合の加水分解反応において、大きな置換基効果を発揮するリガンドの検索を行なった。その結果、6位水酸基を塩素基、tert-ブチルジフェニルシリル基(TBDPS基)で置換すれば大きな置換基効果が得られることを見出し、この導入方法を最適化した。さらに、これらリガンドを導入したモデル化合物について加水分解試験を行い、置換基効果について検討した。その結果、電子吸引性基である塩素基の導入により加水分解が大きく制御され、特定の加水分解条件下では事実上加水分解を惹起させ得ぬ事を見出した。一方、TBDPS基は、電子供与性であるので加水分解を促進することが予測されたが、逆に加水分解を制御することが判明した。この現象は、かさ高いTBDPS基の立体障害により加水分解試薬のグリコシド結合への接近が阻害されたためであると考えられる。これらの結果から、グリコシド結合の加水分解反応には、置換基効果として電気的効果だけではなく、かさ高さによる効果が影響することを実証した。
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