研究概要 |
発達性ディスレクシア(読み書き障害児)の選定基準に関して検討をおこない,その臨床的特徴について報告した(研究発表1).その結果,単語速読検査などで音読速度が遅かった発達障害児は,読み書き検査で成績低下を示し,さらに就学時より文字言語の獲得に問題をもつなど類似した発達歴を有していた.また,開発した単語速読検査(参考文献1)の信頼性を報告した(研究発表2).これら発達性ディスレクシアの選定基準に関する研究結果より,発達性ディスレクシア児の書字障害と運動に問題を持つ児童(発達性協調運動障害児)とで1)両群とも漢字の書字障害があること(研究発表1),2)書字障害には学習時の入力方法が影響していること(参考文献2),さらに3)発達性協調運動障害児では書字学習と視運動性能力との関係が深いことを明らかにし,今年度に計画していた「障害特性と学習法」についてはほぼ完了した.以上の結果から,書字障害にはさまざまな発達障害が関与していることが明らかとなり,単に読みの障害による影響だけではなく,より広い視点に立った学習(記憶)とその障害に視野を広げ,研究を進めて行くことが必要と考えられた.次年度は,大学生を対象に同一の対象を異なる方法で呈示したり,異なる視点から評価を行わせたりすることを通じて,対象の学習法とその成績,そして脳活動の評価をし,学習方略の違いと記憶との関連を解明する.この知見をもとに課題を子どもに適応可能な形へと改変し,実施していく予定である.
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