研究概要 |
温暖化による影響は生食連鎖において議論されることが多かったが,実際には分解にも大きな影響を与えることが予測される.具体的には,二酸化炭素濃度変化,温度変化などにより分解に関与する生物相の変化や有機物そのものの物理化学的な変化が予測される.しかしながら陸上(土壌)分解における温暖化の影響を扱った日本における研究は少ない. 本研究は,温暖化が陸域分解系に与える影響について明らかにするために、温度・二酸化炭素濃度変動チャンバーを用いて実験を行った.チャンバーは屋外に6基設置されており,対照の他、高温処理、高CO2濃度処理、高温×高CO2濃度処理に設定されている。それぞれのチャンバー内には常緑広葉樹のアラカシ(Quercus glauca)の木が成育している.それぞれのチャンバーにアラカシの落葉をリターバッグに入れて設置した.3ヶ月ごとにチャンバーごと5反復のリターバッグを回収し,その場ですぐにバクテリア,菌類測定用のサンプルを作製した後実験室にて分析した.実験の結果、大気中の温度やCO2濃度が変化すると分解プロセスも変化することがわかった。落薬の分解速度やバクテリア,菌類の定着には処理によって違いが認められた.バクテリアは高温処理、もしくは高温処理×高CO2濃度処理において他の処理と比較して多数定着していた.しかし,菌類は外気と同じ処理もしくは高CO2処理において定着量が多く,バクテリアとは違う傾向を示した.この傾向は夏季に顕著であった.落葉の分解速度は外気と同じ処理もしくは高CO2処理において高温処理×高CO2濃度処理と比較して速いことがわかった.この結果から現在の外気と同様の状況下においては落葉の進行は特に夏季おいて菌類優位で進行するが,気温が上昇し,かつ外気に含まれる二酸化炭素濃度が高くなれば菌類の定着は抑制され,バクテリア優位の分解となることが示唆された.
|