研究概要 |
21年度は,陸域における分解実験の解析の続きととりまとめ,および水域におけるpHの変化と水生生物の応答について実験を行った. 陸域での落葉の分解実験では,大気温度と二酸化炭素濃度の違いにより以下のことが明らかとなった.対照(実験期間中の通常大気温度・二酸化炭素濃度)と比較して1,リターバッグに優占した2種の無脊椎動物と菌類は高温区で減少した.無脊椎動物と菌類はいずれも落葉に含まれる水分の影響を受けたため,高温区で減少したものと考えられた.2,落葉の分解は高温区で遅くなった.落葉の含水率は二酸化炭素濃度増加区で増加したが,高温区で減少したため,結果1に伴い生物による分解が抑制された結果と考えられる.3,二酸化炭素濃度の増加のみでは分解に影響は受けなかったが落葉のCN比は増加し,食物資源としての価値は下がった.これらの結果から,温度の上昇によって直接落葉の分解が抑制されるとともに,二酸化炭素濃度の増加によって資源としての質そのものも変化することが示され,短期的にも,資源供給の側面から長期的にも,土壌生態系に影響を及ぼす可能性が高いことが予測できる. 水域では,アメリカザリガニとその餌となるシャジクモを用いて飼育実験を行った.二酸化炭素濃度の増加は水中のpHの低下につながる.甲殻類にとってはpHの低下は殻のダメージへつながるが,シャジクモ類の一部は光合成機構の特徴によってpHが低くとも十分に生育することが知られている.水中のpHを変化させた中で両者を育て,pHの違いによる両者の関係の変化を明らかにすることを目的とした.現在も実験継続中であるが,pHを低下させた(pH4)処理におけるザリガニの体色には変化が見られ,成長は芳しくない.一方,シャジクモは低pH処理でも安定して生育しており,水中のpHが低くなるほうがシャジクモの生育には有利になる可能性が高いことが示唆された.
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