焼成時間が窒化アルミニウム焼結体の熱伝導率と光透過率に及ぼす影響を調査した。1880℃での焼成時間の増加に従い、熱伝導率および光透過率は増加した。光透過率に着目した場合、保持時間≧30hの焼成を行った試料において、320nm付近に光吸収が見られた。そこで、励起・蛍光スペクトルを測定したところ、320nm付近に吸収を持ち、580nm付近にピークを持っ発光が確認された。X線回折や元素分析の結果から、1880℃、保持時間>10hの焼成を行うことによって焼結助剤はそのほとんどが排出されていることがわかった。以上のことから、長時間の焼成によって窒素空孔や格子間アルミニウムなどの真性欠陥が形成された可能性があることがわかった。光吸収に起因する格子欠陥の特定に近づくことができた。 焼成時における還元性(一酸化炭素)ガスが窒化アルミニウム焼結体の特性(熱伝導率や強度)に深く関与することが知られている。還元性ガスを制御するために炭素ペレットを用い、この炭素ペレットが窒化アルミニウム焼結体の微細構造や光透過率、格子欠陥に与える影響を調査した。その結果、炭素ペレットを配置することにより光透過率が向上した。炭素ペレットから発生した還元性ガスが窒化アルミニウム粉末の酸化層や焼結助剤の還元により窒化アルミニウムが高純度化し、さらに、酸素が関与した欠陥の濃度が低下したことによって光透過率は向上したものと考えられる。還元性ガスをコントロールし最適化することは、窒化アルミニウム焼結体の光透過率の向上に重要な要素であることを示した。
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