研究概要 |
昆虫抗菌物質5-S-GADの血管新生抑制作用に必要な構造を同定する目的で、5-S-GAD部分構造体であるβアラニルドーパ(β-AD)、5-S-グルタチオニルドーパ(5-S-GD)、5-S-システイニルドーパ(5-S-CD)を合成し、まずラジカルスカベンジャー活性を比較した。1,1-Diphenyl-2-picryl hydrazyl(DPPH)消去活性を比較すると、5-S-GDとβ-ADはIC_<50>値が5μMで5-S-GADとほぼ同等の活性を有していたが、5-S-CDはIC_<50>値が10μMで活性は二分の一となった。スーパーオキシドアニオン(O_2^-)消去活性を比較すると、5-S-GDと5-S-CDはIC_<50>値が2μMで5-S-GADとほぼ同等の活性を有しており、β-ADはIC_<50>値が0.7μMで、活性は約三倍強くなった。ラジカル種によって消去活性が変化するのは、化合物と基質との親和性や酸化還元電位の違いによると考えられた。現在はこのラジカルスカベンジャー活性が血管新生抑制作用に関わっているか知る目的で、鶏胚漿尿膜(CAM)を用いた血管新生評価系で抑制作用を検討し、相関関係を明らかにしていく予定である。ラジカルスカベンジャー活性と血管新生抑制作用の相関が見い出されれば、メカニズムの一端が明らかになると同時に、より強い血管新生抑制作用を持つ新規化合物のデザインにつながる。一方、血管新生時の活性酸素の関与を明らかにする目的で、CAMを用いて活性酸素の検出を試みた。活性酸素標識プローブとしてDCFH-DAを用いて検討しているが、現在までに蛍光は検出されず、活性酸素の関与は不明である。HEtなど別のプローブでの検討を行う予定である。
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